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SNS運用

フォロワー数より「見られた数」。GMOサインのKPI設計から考える、BtoBのSNSで本当に測るべき指標

AI博士

約9分で読める記事です。ポイントをギュッとまとめましたので、ぜひ最後までどうぞ!

SNS運用の相談を受けるとき、私が最初に尋ねるのは「いま何を成果の数字にしていますか」ということです。多くの場合、返ってくる答えはフォロワー数です。気持ちはよく分かります。いちばん目に入りやすく、増えれば達成感もある。ただ、フォロワーをいくら増やしても問い合わせが1件も増えない、という場面に私は何度も立ち会ってきました。

電子契約サービス「GMOサイン」のX運用が、まさにこの問題に正面から向き合っていて、とても示唆に富んでいました。今回は、その事例を入り口に「BtoBのSNSで本当に測るべき指標は何か」を、SNS効果測定ツールをつくっている立場から考えてみたいと思います。

GMOサインが「フォロワー数」を追わなかった理由

GMOサインのX運用担当者は、「30万人のフォロワーがいても、1投稿のインプレッション(投稿が表示された回数)が1,000しかなければ意味がない」という趣旨の発言をされていました。フォロワー数そのものではなく、実際に投稿が届いた数を重視する、という考え方です。

この担当者は、もともと健康食品の「わかさ生活」で年間3億インプレッションを記録した運用者として知られた方で、2025年にGMOサインへ移ってからは、運用体制の刷新後わずか2週間で730万インプレッション・約6,000人のフォロワー増を記録したと報じられています。BtoB(企業向けビジネス)という、もともと拡散しづらいジャンルでこの数字は、かなり際立っています。

興味深いのは、GMOサインが最終的なKPI(目標とする指標)に「指名検索数の伸長率」を置いていた点です。指名検索とは、「GMOサイン」のように社名や商品名で直接検索される行為のこと。SNSの数字そのものではなく、「結果として“GMOサイン”と検索する人が増えたか」を最終ゴールに据えているわけです。

BtoBのSNSは、投稿がそのまま売上につながることはほとんどありません。だからこそ「認知 → 指名検索 → 商談」という長い道のりの、どこを測れば全体の手応えが見えるかを考え抜いた結果が、この指名検索数なのだと思います。地味ですが、とても本質的な選び方だと感じました。

「フォロワーは名刺の枚数、リーチは会えた人数」

私自身、SNS効果測定のツールをつくっている立場として、この「フォロワーより届いた数」という考え方には全面的に賛同しています。むしろ、数字を測ることを仕事にしている人間ほど、ここにたどり着くのではないかと思います。

データを見ていると、フォロワー数と実際のリーチ(投稿が届いた人数)の差は、想像以上に大きいものです。とくにBtoBのアカウントは顕著で、フォロワーが数万人いても、1投稿のリーチが数百から1,000程度ということは珍しくありません。フォロワーは“過去に興味を持ってくれた人の総数”でしかなく、今この投稿をアルゴリズムが誰に見せるかは、まったく別の話なのです。

私はよく「フォロワー数は名刺の枚数、リーチは実際に会えた人数」とお伝えしています。引き出しに名刺が何百枚あっても、今日会えた人が3人なら、商談はその3人としか進みません。SNSも同じで、抱えているフォロワーの数より、今日の投稿が何人の目に触れたかのほうが、ずっと実態に近い数字だと思っています。

指名検索は「Googleの数字」。SNSで測れるのは“言及数”

ここで、ツールをつくっている立場から一つだけ、正直にお伝えしておきたいことがあります。それは、「指名検索数」は実はSNSの中では測れない数字だ、ということです。

少しややこしいので整理します。指名検索の回数は、GoogleサーチコンソールやGoogleトレンドといったツールで、ある程度追うことができます。ただしそれは、あくまで“Googleでの検索”の話です。XやInstagramの側で、外部のツールがデータを受け取る窓口(API)から取得できるのは、「そのキーワードを含む投稿が何件あったか」という“言及数”であって、「プラットフォームの中で何人がその言葉を検索したか」という数字は、そもそも外部に公開されていません。

ですから、SNS運用のKPIに「指名検索数」をそのまま置こうとすると、測る場所がズレてしまいます。GMOサインの場合は、指名検索という“Google側の数字”を最終ゴールに据えたうえで、SNSはそこへ送り込む手段、という整理になっているはずです。これはこれで筋が通った設計だと思います。

では、SNSの中で成果を見たいときは何を追えばいいのか。私であれば、指名検索の代わりに“指名言及数”——自社名や商品名が、自然にどれだけ投稿されたか——を見ます。これならAPIで集めることができますし、「どれだけ人の口に上ったか」という意味で、指名検索にいちばん近い肌感が得られます。検索はGoogleで、言及はSNSで。測りたいものに合わせて見る場所を分けるのが、現実的なやり方だと感じています。

なぜ多くの現場は「測りやすい数字」に流れてしまうのか

「正しい指標を選びましょう」と言うのは簡単ですが、実際にはそう簡単ではありません。私がお客さまの運用を見ていても、つい“測りやすい数字”のほうに流れてしまう場面によく出くわします。

いちばん多いのは、やはりフォロワー数といいねの数です。誰でも一目で確認でき、グラフにすれば右肩上がりで気持ちがいい。だから報告書にも使いやすいのです。けれど、フォロワーは増えているのに問い合わせはまったく増えていない、というケースは本当によくあります。報告書はきれいなのに、ビジネスのほうは1ミリも動いていない。見ている数字が“きれいだけれど結果と結びついていない”典型だと思います。

理由はシンプルで、結果に近い数字ほど測るのが面倒だからです。サイトへの流入や問い合わせをSNSと結びつけるには、計測用のタグを仕込んだり、流入の導線を整えたりといった手間がかかります。その手間を惜しむと、つい“すぐ見える数字”に逃げてしまう。私たちがツールでやろうとしているのは、まさにこの“面倒だけれど大事な計測”を、できるだけ簡単にすることなのです。

アルゴリズムが揺れても崩れないアカウントの共通点

もう一つ、GMOサインの事例で触れられていたのが、Xのアルゴリズム(どの投稿を誰に見せるかを決める仕組み)の変化への対応です。Xのアルゴリズムは、ここ数年で何度も大きく揺れてきました。

BtoBはとくに、この揺れに弱いと私は見ています。もともと広く拡散するタイプの投稿が少ないため、アルゴリズムが“盛り上がっている話題”を優先するように動くと、まじめな業務系の投稿はますます埋もれやすくなるからです。

ただ、その中でも影響を受けにくいアカウントがあります。それは、フォロワーときちんとコミュニケーションが取れているアカウントです。リプライ(返信)や引用でちゃんと会話が生まれていると、アルゴリズムがどう変わっても数字が大きくは崩れません。結局のところ、SNSの本質である“やり取り”が成立していれば、土台は揺らがないのだと思います。

そのうえで、「波に乗る」運用もBtoBで十分に現実的です。GMOサインがグループ全体の取り組みとコラボした投稿で、通常を大きく上回るエンゲージメント(反応)を記録したのは、その好例だと感じました。ポイントは“自分ひとりで波を起こそうとしない”ことです。自社単独でバズを狙うのは難しくても、すでに世の中で盛り上がっている話題や、グループ・他部署の動きに自分の投稿を“重ねる”ことはできます。タイミングと文脈さえ合えば、フォロワーが少なくても一気に届く。BtoBは、この“便乗のうまさ”と“日頃の会話”の両輪で戦うのが現実的だと思っています。

「1人体制+AI」をどう活かすか

GMOサインのX運用は、基本的に1人体制で、複数のAIツールを使い分けながら進められていると報じられています。これは、多くのBtoB企業のSNS担当者にとって、とてもリアルな姿ではないでしょうか。担当が1人というのはむしろ普通で、その1人をどれだけAIで“増幅”できるかが勝負になります。

線引きとしては、AIに任せていいのは“量と速さ”の部分だと考えています。投稿文のたたき台づくり、リサーチ、過去投稿の分析、表現のバリエーション出し。このあたりはAIが圧倒的に速いので、どんどん頼ったほうがいいと思います。

逆に、人がやるべきは“判断と関係づくり”の部分です。何を発信すると決めること、フォロワーとの会話で温度感を読むこと、炎上しそうな空気を察すること。ここはまだAIに任せきれません。私はシステム開発もしていますが、AIは1つのバグを直すのはとても速いのに、機能全体をまるごと設計しようとすると、とたんに頼りなくなる場面があります。SNSも似ていて、“部分の作業”は任せられても、“全体をどう組み立てるか”は人が握る。この線引きが、当面はいちばん効くのではないかと思っています。

まとめ

何を測るかを決めることは、運用そのものを決めることだと思います。フォロワー数を追えばフォロワーを増やす運用になり、指名検索や指名言及を追えば“思い出してもらう”運用になる。もしSNS運用で迷っているなら、施策を増やす前に、追う数字を一つ選び直し、その数字がどこで測れるのかまで一緒に確かめておく。遠回りに見えて、それが結局いちばんの近道なのだと感じています。

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