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SNS運用

「賑わい」で埋められなくなったプロフィール——Xのタブ分離が運用に突きつけたもの

AI博士

約8分で読める記事です。ポイントをギュッとまとめましたので、ぜひ最後までどうぞ!

Xのプロフィール画面で、自社の投稿とリポストが別のタブに分かれました。企業アカウントの運用でまず効いてくるのは、プロフィールを開いた人に見える情報が変わることです。これまでリポストで埋めていた「動きのあるアカウント」という印象が、オリジナル投稿だけで作られることになります。

そしてもう一つ、見落とされがちな影響があります。フォローやDMのボタン位置が変わったことです。プロフィール経由の流入を追っている担当者にとっては、7月中旬を境に数字が動いていてもおかしくありません。

何が起きたのか

2026年7月16日ごろ、日本のタイムラインでプロフィール画面の異変に気づく人が増えました。上部にタブが並び、これまで一本の流れで見えていた投稿とリポストが、別々の場所に切り分けられています。報道によれば、タブは「ポスト/ハイライト」「返信」「リポスト」「動画/画像」「記事」という構成に再編されました。

利用者が気づいた翌日にあたる7月17日、Xのデザイン統括を務めるBenji Taylor氏が、プロフィールの新しいデザインの展開を開始したという趣旨の投稿を行ったと報じられています。つまり、まったく告知がなかったわけではありません。ただ、告知は英語の短い一文で、どのタブがどう変わるのか、日本語圏の利用者に向けた説明があったわけでもない。気づいたのは利用者が先で、説明はあとから、しかも概要だけでした。

補足として、報道では引用リポストの扱いにも触れられています。引用リポストは「リポスト」ではなく通常のポストとして処理されるため、今後は引用の形をとる投稿が増えるのではないか、という見方です。一言添えて引用する運用が、相対的に有利になりそうです。

「動いていること」を成功と見なさない

私はX やInstagramのAPI(アプリ同士をつなぐ技術的な窓口)を触ってきましたが、この手の変更で一番きついのは、変更そのものより、変更に気づく手段がこちら側にしかないことです。通知が来るのは、たいてい壊れたあとです。

覚えているのは、レスポンスの中身が静かに変わっていたケースです。エラーは出ません。ログにも異常は残らない。ただ、以前は入っていた値が空で返ってくるようになっていた。気づいたのは、数字が不自然に減っていることを不思議に思ったからで、原因にたどり着くまでに時間がかかりました。はっきり壊れてくれたほうが、まだ楽です。

そこから決めたのは、動いていることを成功と見なさないということです。エラーが出ていないかではなく、返ってくる中身が前と同じかを見る。今回のプロフィール改修も似ていて、画面は普通に表示されているので、見に行かないかぎり何も起きていないように見えます。告知が出ていたかどうかとは別に、自分の目で確かめる工程は要ります。

リポストで賑わいを作れなくなった

今回の分離で企業アカウントが最初に受ける影響は、投稿の見え方です。Postsタブに並ぶのは、自社が書いたものだけになります。更新が滞っていれば、滞っているとおりに見える。

代理店の現場を見てきた実感として言うと、リポストを演出のためにやっている、と自覚しているケースはあまり多くありません。多くは、投稿のネタが尽きた結果としてリポストが増えています。オリジナルを週2本出す想定で契約したものの、社内の確認が通らず1本になる。空いた分を関連ニュースのリポストで埋める。そういう積み重ねです。

比率が高くなりやすいのは、1本投稿するのに社内チェックが何段階も必要な会社でした。金融や医療のように、表現ひとつが規制に関わる業界です。自社の言葉で書いた投稿は法務や広報の確認を通るまで出せませんが、他社ニュースのリポストは自社の主張ではないぶん、判断が軽く済みます。結果として、タイムラインの大半がリポストになる。

ただ、それが悪かったとも言い切れません。業界の動きを追っているアカウントとして評価されている面もありました。今回の分離では、その見え方だけが先に消えます。

オリジナル投稿だけでプロフィールを成立させるとなると、多くの企業は本数が足りません。ここで私が取るのは、本数を確保するほうです。

理由は単純で、質は事前に判断できないからです。丁寧に作った投稿が伸びず、片手間で出したものが伸びる。どれが当たるか分からない以上、打席に立つ回数を確保するほうが確実だと思っています。月2本で当てにいくのは、運の要素が大きすぎます。

ただし「本数を増やす」を「毎日投稿する」と読み替えると失敗します。増やすべきなのは、時間をかけずに出せる形の投稿です。長文の解説を週5本作るのは無理でも、社内で交わされた質問と回答をそのまま出すことはできる。作り込むものと軽く出すものを分けておくと、本数は自然に増えます。プロフィールを開いたときに動いて見えるかどうかは、内容の深さではなく更新の間隔で決まります。

数字が落ちたとき、原因は自社の中にあるとは限らない

ボタンの位置が変われば、押される率も変わります。厄介なのは、この手の変化が施策のせいだと誤読されやすいことです。投稿の内容を変えた週にたまたま重なれば、その施策が失敗したと結論づけてしまう。

正直に言うと、1つのアカウントの数字だけを見ていても切り分けはできません。自社の数字が落ちたとき、それが投稿のせいなのか、プラットフォームの変更なのか、判断する材料が内側には存在しないからです。

切り分けの手がかりは、他のアカウントも同じ時期に同じ動きをしているかどうかです。同じ週に、業種も投稿内容も違う複数のアカウントで一斉に同じ指標が下がっていれば、それは各社の施策の問題ではありません。逆に、自社だけが落ちているなら投稿を疑う。私たちがSocialReportで意識しているのもそこで、単体の数字をきれいに見せることより、複数アカウントを横に並べて比較できる状態を作ることを優先しています。自分の数字だけを凝視していると、原因を全部自分の中に探してしまう。落ちた理由が外にあると分かるだけで、無駄な改善作業をせずに済みます。

原因がプラットフォーム側の変更だと分かった場合、クライアントにどう説明するか。内容より順序だと思っています。外部要因を先に出すと、どれだけ正確でも言い訳として処理されてしまうからです。

なので、まず自分たちの側を先に潰します。投稿の本数、時間帯、内容の傾向。先月と比べて変えたところを一通り見て、こちらの運用には落ちる要因が見当たりませんでした、と言えるようにしてから外部の話を出す。順番が逆だと、同じ説明でも受け取られ方がまったく違います。

もう一つ、正直に伝えるようにしているのは、すぐに戻す方法はないということです。落ちた原因が仕様変更なら、対策を打っても戻るとは限りません。そこで無理に施策を提案すると、効かなかったときに信頼を二重に失います。今月は様子を見る、来月の数字で判断する、と伝えるほうが結果的に長く付き合えます。何もしないことを提案するのは勇気が要りますが、事前に期待値を共有できていれば通ります。

「選べないこと」が反発を生んだ

今回の変更で不満が集まったのは、分離したこと自体ではなく、選べないことのほうだったように見えます。日本語圏には「空リプ」——特定の相手を名指しせず、リポストやリプライを介して間接的に思いを伝える投稿文化があり、投稿とリポストが同じ流れにあったから読み取れていた文脈が、分離によって切れてしまったという指摘が相次ぎました。

サービスを作る側としても、選択肢を残すかどうかは日々の判断です。選択肢を残すのは一見親切ですが、作る側が判断を放棄しているだけのこともあります。設定項目を増やせば誰も文句を言いませんが、実際には大半のユーザーが設定画面を開かないまま初期値で使い続けます。それなら初期値を正しくするほうが、よほど誠実だと考えています。

私の基準は、その変更で何かが見えなくなるかどうかです。並びが変わるだけなら、慣れれば済むので選択肢は用意しません。一方、これまで見えていた情報にたどり着けなくなる変更は、必ず戻せるようにします。慣れの問題と、失われる問題は別だからです。今回のタブ分離が反発を招いたのは、後者に近い形だったからだと見ています。使い勝手ではなく、できていたことが減っている。

まとめ

今回の改修が企業アカウントに効いてくるのは、リポストで賑わいを作れなくなったことと、ボタン位置の変更で流入の数字が動きうることの2点です。どちらも、慌てて運用を作り変えるほどの話ではありません。効くかどうかを見極めてから、一つだけ変えれば足ります。

段階的な適用なので、担当者の端末にはまだ反映されていないこともあります。まず自社のプロフィールを開いてみる。対応を決めるのは、そのあとで間に合います。

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