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SNS運用

プロフィールは借り物の棚である——Xのメディア欄が動画優先になって思うこと

AI博士

約8分で読める記事です。ポイントをギュッとまとめましたので、ぜひ最後までどうぞ!

Xのプロフィール画面で、自分が投稿した画像が見つけにくくなりました。作品をメディア欄に並べて見せてきたイラストレーターやカメラマンにとっては、ポートフォリオが一段奥に移された形です。同じことは、商品写真や実績画像で信頼を作ってきた企業アカウントにも起きています。

対策の話に入る前に、この件で私がいちばん大事だと思っているのは、プロフィール画面は自分の棚のようでいて、実際には貸してもらっている棚だという一点です。並べ方を決める権利は、こちらにはありません。

何が変わったのか

2026年7月18日ごろから、Xでこんな声が急に増えました。プロフィールを開くと動画ばかりが出てきて、自分が投稿した写真が見当たらない。原因はプロフィール画面の「メディア」タブの仕様変更です。開いた瞬間に表示されるのが動画一覧に切り替わり、画像を見るには右上の▼アイコンをタップして「画像」を選び直す一手間が必要になりました。

たった一手間です。ただ、その一手間が挟まる場所が問題でした。新しくプロフィールを訪れた人が、過去作にたどり着く前に離脱します。ワンタップの差が、そのまま到達率の差になる。

背景情報として補足すると、この変更は突然降ってきたものではありません。海外のガジェットメディアpiunikaWebによれば、メディアタブを動画タブに置き換える動きは2026年5月の時点で一部のAndroid環境ですでに確認されていました。同メディアが紹介した分析では、当時のユーザーコメントの94%がネガティブだったとされています。限られた範囲のコメントを集計したものなので、数字そのものは参考値として見るのが妥当でしょう。その後、7月中旬にかけてiOSやWeb版へロールアウトが広がり、日本語圏で一気に話題になりました。

なお、この時期のプロフィール変更については、7月17日にXのデザイン統括を務めるBenji Taylor氏が「プロフィールの新しいデザインの展開を開始した」という趣旨の投稿を行ったと報じられています。メディアタブの件も、プロフィール全体の再設計の一部と見るのが自然だと思います。

ワンタップの重さを、私は何度か体験しています

数字は正直で、導線に一手間が挟まると、その手間の分だけきれいに落ちます。

印象に残っているのは、自社サービスで認証まわりの画面を一枚増やしたときです。やっていることは同じで、確認画面を挟んだだけ。それでも完了率は目に見えて下がりました。ユーザーが嫌がったというより、面倒だと感じる前に離脱している、という感触でした。

今回のメディアタブも構図は同じです。▼を押して「画像」を選び直すだけ、と言えばそれまでですが、初めてそのアカウントを訪れた人はその操作を知りません。知らない人にとっては、一手間ではなく「見つからない」と同じです。

二か月かけて、静かに広げられていた

厄介なのは、この手の変更が段階的に適用されることです。5月から始まっていたのに、日本で騒ぎになったのは7月でした。

完璧に検知する方法はない、というのが正直なところです。そのうえで習慣にしているのは二つあります。一つは、端末を分けて見ることです。同じアカウントでも、iOSとAndroid、ブラウザで表示が違うことは珍しくありません。担当者の端末では何も変わっていないのに、フォロワーの半分にはもう新しい画面が出ている、という状態が普通に起こります。だから自分の画面だけを根拠にしない。

もう一つは、海外の情報を先に見ることです。今回のメディアタブも、日本で話題になる二か月前に海外メディアが取り上げていました。日本語で騒ぎになった時点では、変更はもう終わっています。英語圏で先に出るのが常なので、そこを見ておくと心の準備ができます。

ただ、どちらも早く知るための工夫であって、止める手立てにはなりません。だからこそ、次の話になります。

「なくなったら再現できるか」で預け先を分ける

私が資産の置き場所を決めるときの基準は、ひとつだけです。なくなったら再現できるかどうか。

投稿そのものは、なくなっても書き直せます。だからXに預けて構いません。反応の数字も、消えたら痛いですが事業は止まらない。預けてよい側です。

預けてはいけないのは二つあります。作品や記事の原本と、連絡先です。原本は自分のサーバーかローカルに必ず持っておく。連絡先というのは、フォロワー数ではなくメールアドレスのことです。フォロワーは、プラットフォームが並び順を変えただけで届かなくなります。実際、今回のメディアタブの件でも、フォロワーは減っていないのに作品は見られなくなりました。数は残っているのに、つながりだけが細くなる。

だから私は、フォロワー数を資産の数字ではなく、預けている残高の表示だと考えています。引き出せる保証は、こちらにはありません。

とはいえ、外部にポートフォリオを持ちましょう、と勧めても、多くは実行されません。理由ははっきりしていて、困っていないからです。今はメディア欄で足りている。困る日が来るかどうかも分からない。そんな状態でサイトを作る話をされても、優先順位は上がりません。正しい提案ほど、緊急ではないので後回しになります。

効いたのは、規模を下げて伝えることでした。ポートフォリオサイトを作りましょう、ではなく、代表作を5点だけ置いたページを一枚作りましょう、と言う。無料のサービスで十分ですし、一時間で終わります。完成度の高いものを目指すと着手されないので、まず存在させることを目標にします。

もう一つはタイミングです。平時に言っても動きませんが、今回のように実際に不便が起きた直後は違います。見つけてもらえなくなったと本人が感じている時期に伝えると、その日のうちに手が動くことがあります。困ってから言うのでは遅い、とよく言われますが、実際には困った瞬間がいちばん通じます。

反応しないと決めるのも、判断のうちです

では仕様変更のたびに何をするか。正直に言うと、フィードバックを送っても仕様は戻りません。私も何度か送りましたが、変わったことはありません。だからできることを挙げるなら、行動より判断の話になります。

一番大事なのは、今回は動かないと決めることだと思っています。仕様変更のたびに運用を組み替えていると、アカウントのやり方が半年で別物になります。しかもプラットフォームの変更は、そのまま定着するとは限りません。数か月で元に戻ることも、さらに別の形に変わることもある。追いかけた分がそのまま無駄になるケースを、何度か見てきました。

なので私は、変更を見つけたらまず、これは自分たちの成果に効くのかを考えます。効かないなら、知っておくだけで手は打ちません。効くなら、落ち着いてから一つだけ変える。反応しないという選択肢を最初に持っておくと、振り回される回数はかなり減ります。慌てて対応したくなるのは、対応しないと仕事をしていないように見えるからでもあります。そこは社内で先に握っておけると楽になります。

代理店やクライアントに対しても、私は提案の段階で「この施策はXの現在の仕様に乗っています」と必ず伝えています。免責のためではなく、期待値を合わせるためです。仕様が変われば効果も変わる、という前提を最初に共有しておかないと、半年後に数字が落ちたときに、原因の話ではなく責任の話になってしまいます。

なお、今回の変更には賛否があります。タイル状に整理された見た目は写真アプリに近く、見やすくなったと評価する声も一定数あります。ただし投稿本文はタップしないと表示されず、複数画像の投稿でも先頭の1枚しか一覧に出ません。全面的な改悪と言い切るのは、たぶん正確ではないと思っています。

まとめ

棚の並べ方を決めるのは、いつも貸主のほうです。今回の変更も、画像を主戦場にしてきた人を狙ったものではなく、プラットフォームの都合で棚が組み替えられた結果でした。理屈が分かったところで、作品が奥の段に移った事実は変わりません。

だからこそ、なくなったら再現できないものだけは手元に置いておく。代表作を並べた一枚のページと、連絡先。それだけでも、次に棚が動いたときの受け身は取れます。フォロワーの数は、預けている残高の表示にすぎません。

参考情報