約7分で読める記事です。ポイントをギュッとまとめましたので、ぜひ最後までどうぞ!
目次
X が Premium 加入者向けに、過去 24 時間にアクティブだったフォロワー数を表示する機能を始めました。総フォロワー数の隣に「実際に動いているのは何人か」が並ぶ世界に変わったわけです。これまで月次レポートで当たり前のように使ってきた「フォロワー数」や「エンゲージメント率」が、少し違った意味を帯び始めています。今回は SNS 効果測定ツールの SocialReport を運営している立場から、この変化がお客様の現場にどんな影響を及ぼすのかを書いてみます。
X が Premium 加入者向けの分析画面に、過去 24 時間にアクティブだったフォロワーの実数と、総フォロワー数に占めるアクティブユーザーの割合を表示するようになりました。X の製品責任者である Nikita Bier 氏は「ユーザーは自分のアクティブフォロワー数を過大評価する傾向がある」「投稿が全フォロワーに届かないことへの不満につながっている」とコメントしています。将来的には 3 時間単位のデータも追加予定とされており、投稿が届きやすい時間帯まで可視化される方向のようです。
注意点としては、この機能は X Premium に加入していないと見ることができません。さらに X 側で過去の数字を自動で蓄積してくれるわけではないので、推移を追いたい場合は自分で月初にスクリーンショットを残すなど、スタンプカードのように手で記録する習慣を作る必要があります。
このニュースを最初に見たとき、私の正直な第一印象は「これは助かるな」でした。SocialReport を運営していると、お客さんから「フォロワーは増えているのに反応が薄い」という相談を受けることがあります。原因はわかっていて、フォロワーリストの中に休眠アカウントが積み上がっているからなのですが、それを数字で示す手段が今までなかったのです。今回 X 自身がそこを開示し始めたのは、運用代行や分析サービスを提供する側にとって追い風だと感じています。あとは欲を言えば、API(外部のシステムから数値を取得できる窓口)でも同じ数字が返却されるようになると、ツール側でも自動集計や推移グラフ化ができるので嬉しいなと思っています。
ここで気をつけたいのが、「アクティブフォロワー=届く人」と短絡しないことです。アクティブにカウントされる条件は、過去 24 時間にログインや閲覧があったアカウントであって、自分の投稿を実際に読んだ人とは限りません。ログインしてタイムラインを少し眺めて閉じた人もカウントされますし、その人のタイムラインに自分の投稿が流れてきた保証もない。あくまで「届けられる可能性のある最大値」と捉えるのが正確だと思います。
たとえばアクティブフォロワーが 1,500 人と表示されたとして、その全員に投稿が届いているわけではありません。実際に投稿が表示された人はさらに少なく、その中で本文まで読んでくれた人はもっと絞られます。アクティブフォロワー数は「ここから先のじょうごの入口」を示す数字であって、結果指標そのものではない、という前提でレポートに落とし込むと誤解が生まれにくくなります。
お客様から「クライアントへの報告でどう数字を見せるべきか」という相談を受けたとしたら、私は次のような順序でアドバイスします。
最初に押さえてもらうのは前提条件です。先に書いた通り、この機能は X Premium 必須で、推移データは自動では残らない。クライアントに勧める前に、自社で Premium 契約と月次の記録運用を整えるところから始めます。
次に、現状把握として「今、自社アカウントの実アクティブが何人いるのか」を一度数字で押さえる。そのうえで、過去 3 ヶ月の総フォロワー推移とアクティブ比率の推移を並べて見てもらいます。フォロワーは増えているけどアクティブ比率は下がっている、というパターンが意外と多いんですよね。そのうえで初めて、施策の話に入ります。アクティブ比率が下がっているなら、「新しいフォロワーを増やす施策」ではなく「今いるフォロワーとの接点を増やす施策」にリソースを振り替える提案ができます。順序を守ることで、クライアントへの説明がぶれにくくなります。
数字を見せるときに「一言添える」ことの大切さは、SocialReport の運用を通じて何度も実感してきました。以前、レポート機能でエンゲージメント率の数値だけを大きく出すデザインにしたことがあるのですが、すると「数字が前月より下がっているのはなぜか」というお問い合わせが増えました。実際は X 側のアルゴリズム変更が原因で全アカウント共通の傾向だったのですが、数字だけが独り歩きしてしまったわけです。補足を合わせて伝えるようにしてからは問い合わせが減り、むしろ「この補足が助かる」という声をもらうこともありました。数字は一人で語らせない、というのが運用ツール提供者として学んだことです。アクティブフォロワー表示も同じで、数字をそのまま渡すと「フォロワーの 80% が休眠です」と受け取られて、説明の前にクライアントが落ち込んでしまうかもしれません。「これはあくまで母集団の上限値で、施策の余白を示す数字でもあります」と一言添えるかどうかで、受け取り方が大きく変わってくるはずです。
ここで一つ、私の考えをお伝えします。会社として 9 期やってきた今でも、月次レポートのメインがフォロワー数のままのお客様は多いと感じています。エンゲージメント率を併記するところは増えましたが、クライアント側が「フォロワーが何人増えたか」を一番先に見るので、結局そこが KPI の中心に居続けている。SocialReport のお客さんからも「エンゲージメント率を主指標にしたいけど、クライアントへの説明が難しい」という相談を今もよく受けます。
だからこそ、アクティブフォロワー表示が出てきた今のタイミングは、KPI の再定義を持ち出しやすい機会だと感じています。「フォロワー数 1 万人のうち、実アクティブは 1,500 人です」という事実は、フォロワー数信仰そのものを揺らす材料になりうる。とはいえ、これがすぐ業界全体に広がるとは思っていなくて、おそらく数年単位で少しずつ浸透していく類の話だと見ています。焦らず、自社の定例レポートのフォーマットに 1 列追加するところから始めるのが現実的かもしれません。
アクティブフォロワー表示は、これまで見えなかった分母を可視化する変化です。数字を見て驚く瞬間もあるかもしれませんが、見えるようになったこと自体は運用の精度を上げてくれる材料だと思っています。フォロワー数を追ってきた現場の積み重ねが無駄になるわけではなく、その上に解像度の高い指標が一つ加わる、と捉えてもらえたら嬉しいです。SocialReport もこの変化に合わせて、お客さんが新しい数字を活かせる形を一緒に考えていきたいと思っています。