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SNSマーケティング

賞品を5倍にしても、拡散は1%も動きませんでした——Xキャンペーン32件を集計して分かったこと

AI博士

約8分で読める記事です。ポイントをギュッとまとめましたので、ぜひ最後までどうぞ!

Xのプレゼントキャンペーンで拡散量を決めているのは、賞品の豪華さでも当選人数でもありません。うちのサービスで計測してきた32件のキャンペーンを集計し直したところ、賞品の単価を5倍にしても、リポスト数はほとんど動きませんでした。動いていたのは別のところです。

賞品を5倍にしても、拡散は1%も動かなかった

きっかけは、ほぼ同じ条件で2回実施されたキャンペーンが手元のデータに残っていたことでした。ファミリーマートがラジオ番組と組んで実施した「モーニングバトル」という企画です。

1回目は2026年6月、ファミペイのギフトコード1,000円分を10名に。2回目は7月、5,000円分を2名に。総額はどちらも10,000円で同じ、応募条件も「アカウントをフォローして、この投稿をリポストする」の2つで同じ、告知の文面もほぼ同じでした。違うのは賞品の配り方だけです。

結果は、リポストが7,043件から6,963件へ。差は1.1%でした。表示回数も48,937回から47,682回で、ほとんど誤差の範囲に収まっています。当選確率を5分の1にして、1人あたりの金額を5倍にしても、拡散の量は変わらなかったということになります。

正直なところ、この結果自体は意外ではありませんでした。私は以前から、賞品の金額が拡散量を決めているという実感を持っていません。むしろ効いているのは、その賞品が誰にとっても嬉しいものかどうかのほうだと思っています。冷蔵庫が当たるキャンペーンだと、金額としては大きくても応募者は減ります。家電のように置き場所を選ぶものは、当選確率と大きさの両方が引っかかって、そもそも参加されにくい。逆にAmazonギフトやQUOカードを100名に、という形にすると参加者は増える傾向にあります。金額の話ではなく、自分がもらって困らないかどうかの話です。

背景として、第三者の調査でも近い結果が出ています。企業公式アカウント35社・60投稿を対象にした2025年7月以降の分析では、当選人数が1〜20人の範囲では参加率に大きな差が出ず、21人以上になると差が開くと報告されています。景品の単価そのものより当選人数のほうが影響が大きいという整理です。今回の2件はどちらも20人以下の枠に収まっているので、差が出なかったことと矛盾しません。

全員に必ず配った施策のほうが、広がらなかった

もっと極端な例もあります。原神というゲームが8月に実施した診断キャンペーンです。

質問に答えると職業が診断され、その結果をシェアすると参加者全員に原石160個が配られました。ガチャ1回分に相当し、課金レートで換算するとおよそ300円弱です。抽選ではなく、やれば必ずもらえる。期待値だけで比べれば、当選2名の懸賞とは比較になりません。

それなのに、Shiritomoで実際の投稿を追ってみると、1件あたりのいいねは1〜2件、リポストとリプライは0件が大半でした。1投稿あたりの表示回数も数十から150程度で、フォロワーの外まで届いた形跡がほとんど見当たりません。投稿の数そのものは大量に流れているのに、です。

ここが今回いちばん書きたかったところです。参加者の行動が、どこに積み上がるのか。診断シェア型では、参加者それぞれが自分のアカウントで新しい投稿を作ります。数千件生まれても、それは数千個のバラバラな投稿でしかありません。一方で懸賞型のリポストは、企業の1つの投稿にカウントが集まります。集まるほどその投稿が伸び、伸びるほど次の人の目に触れる。同じ「参加した」でも、行き先がまるで違います。

数字にも表れていました。集計した32件のうち、リポスト型は30件が開始から6時間以内にピークを迎え、6時間で全体の半分(中央値53%)、12時間で8割近く(同77%)が積み上がっています。初速でほぼ決まる形です。対してハッシュタグ投稿型は、観測できたのが2件だけなので傾向として見るにとどまりますが、総件数が699件と36件。リポスト型の中央値が約1万件だったことを考えると、1桁から2桁小さい水準でした。ピークが立つ時刻も遅く、緩やかです。

テンプレートを配って投稿させるなら、リポストでいい

こう書くとUGC施策を否定しているように読めるかもしれませんが、そうではありません。感想やレビューのように、参加者自身の言葉が残るUGCが増えるのであれば、拡散量とは別の価値があると思っています。実際に使った人が何と言っているかは、次の人の判断材料になります。

引っかかっているのは、その中身のほうです。実際のUGCキャンペーンでは、投稿されやすいようにテンプレートを用意して、それに沿って投稿してもらう形が多いように感じています。診断結果とハッシュタグと公式アカウントのメンションだけが並ぶ投稿は、まさにその形です。書いた本人にも読んだ人にも何も残りません。それならリポストでいいのではないか、というのが今の私の考えです。

この点は業界の一般的な整理ともそれほどずれていません。ハッシュタグ投稿型は拡散性が低い代わりにUGCが集まる、リポスト型は拡散に強い、という使い分けは各社が発信しています。私が付け加えたいのは、集まったUGCがテンプレートの複製である場合、UGC側のメリットが実質的に消えてしまうという点だけです。

もうひとつ、継続すれば積み上がるという話も検証してみたのですが、こちらは支持できませんでした。同じアカウントで複数回実施していたのは3件だけで、しかも方向が揃いません。ある企画は第1弾のリポスト14,455件に対して第2弾が2,689件と大きく落ち、別の企画は逆に増えていました。ガンプラの懸賞が106回続いていて毎回6,000件規模のリポストを集めているのは事実ですが、続けたから伸びたのか、もともと強い企画だから続いているのかは、手元のデータでは分けられませんでした。

見る指標を1つ足すなら、表示回数に対するリポスト率

現場の話をすると、キャンペーンの成果として見られているのは、ほぼ参加数だけという印象があります。応募が何件あったか、リポストが何件付いたか。それ自体は間違っていないのですが、参加数だけを見ていると、原神のケースのような状態を失敗として検知できません。投稿数は増えているからです。

そこで1つだけ指標を足すとしたら、表示回数に対するリポスト率が扱いやすいと思っています。告知が何回表示されて、そのうち何件がリポストにつながったか。届いた人のうち何割が実際に動いたか、という転換率です。集計した29件のリポスト型では中央値が5.8%、幅は0.2%から18.0%まで開いていました。同じ「リポスト1万件」でも中身がまるで違うということになります。

この指標を入れると、総量では見えないものが見えてきます。たとえば手元のデータでは、表示304万回でリポスト7,181件という案件(0.2%)と、表示4.8万回でリポスト8,653件という案件(18.0%)が並んでいました。表示回数は63分の1なのに、リポストの数では後者が上回っています。表示が多いこと自体は成果ではなく、届いた相手が合っていたかどうかは別に見る必要がある、ということだと受け止めています。

先ほどのファミリーマートの2回も、この指標で見ると14.4%と14.6%でした。賞品の配り方を変えても、届いた人が動く率までは変わっていません。ハッシュタグ投稿型の2件はどちらも0.2%で、こちらは表示はされているけれど動きにはつながっていない状態です。

そして拡散の勝負は6時間で終わります。告知した時刻がそのまま上限を決めるので、後から盛り返す前提の設計は組みにくい。逆に言えば、開始から半日のデータが揃った時点で、そのキャンペーンの着地はおおよそ読めます。

まとめ

賞品を5倍にしても拡散は1%しか動かず、全員に確実に配った施策のほうが広がらない。今回のデータを見ていて感じたのは、キャンペーンで動かせるのは賞品ではなく型だということでした。万人に嬉しいものを、フォローとリポストの2アクションで、というところまで決まってしまえば、あとの中身はそれほど結果を変えません。

賞品を豪華にする検討に時間を使う前に、参加者の行動がどこに集まるのかを決めておく。それだけで、同じ予算でも結果は変わってくるはずです。参加数は増やそうと思えば増やせます。増やせるからこそ、その数字だけでは何も分からない、というのが今回の実感でした。

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