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X (Twitter)

Xがシャドウバンの条件を公開しました。確認機能を開いてみたら、項目がありませんでした

AI博士

約7分で読める記事です。ポイントをギュッとまとめましたので、ぜひ最後までどうぞ!

「シャドウバンなんて存在しない」。Xは長いあいだ、そう説明してきました。その説明が2026年8月13日に変わり、投稿の表示範囲を絞る仕組みが、推薦アルゴリズムのコードごと公開されています。

日本のタイムラインでは「条件が30個公開された」という話題として広がりました。ただ、同じ日にもう一つ発表されたものがあります。自分のアカウントや投稿に、表示を絞るラベルがいくつ付いたのかを確認できる「Under the Hood」という機能です。SNSを運用する側にとっては、こちらのほうが大きい話だと思っています。

先に結論を書きます。確認する手段は、たしかに用意されました。ただ、そこから出てくるのは先月ぶりの集計データで、しかも私の手元には、まだ届いていません。

8月13日に公開されたのは、条件だけではありません

報道および公開されたリポジトリによると、Xは「おすすめ」タイムラインを動かしている推薦アルゴリズムのコードをGitHub上で公開しました。ライセンスはApache License 2.0で、投稿を並べ替える処理だけでなく、そもそも表示するかどうかを決める部分(可視性フィルタリングと呼ばれています)も含まれています。判定の結果は、通常どおり表示する、警告を挟んで表示する、表示しない、の3つに分かれると説明されています。

公開された資料を読み解いた解説によれば、投稿に付くラベルが18種類、アカウントに付くラベルが12種類あるとされています。もっとも多いのは、フォロワー以外へのおすすめから外れるというもので、これは本人には通知されません。一方で、プロフィールからのみ閲覧できる状態にする制限では、見た人に注記が表示されるとされています。すべてが無言のうちに進むわけではない、ということです。

そして同じ日、「Under the Hood」の試験提供が始まりました。設定内のページから、自分のアカウントと投稿にどんなラベルが何件付いたのかをダウンロードできる機能です。存在そのものを認めてこなかった会社が、確認する手段まで自分で出した。これは小さな変化ではないと思っています。

出てくるのは診断書ではなく、JSONです

ただ、開いて分かるのは「あなたはシャドウバン中です」という判定ではありません。ダウンロードできるのは、前の暦月に付いたラベルの集計をまとめたJSONファイル(プログラム同士がデータをやり取りするための書式で、そのままでは人が読む形になっていません)です。どの投稿だったのかは分かりませんし、いま制限を受けているかどうかも分かりません。分かるのは、先月そういうラベルが何件付いたか。それだけです。

意味を知るには、公開されたコードと突き合わせて自分で読むことになります。技術者ではない人向けの案内としては、そのJSONとGitHubのコードを一緒にAIに読ませて解釈してもらう、という方法が紹介されていました。

これを読んで、他人事ではないと思いました。私はSNSの数値を集めてレポートにするサービスを提供していて、お客様に生のデータをそのままお渡しすることはありません。渡さないことが価値だと考えているからです。そして最近、APIで取得したデータをAIに渡し、レポートの形まで持っていく機能をリリースしました。Xが案内している方法と、やっていることはほぼ同じです。

だから、その方向が有効であること自体は疑っていません。実際に効きます。ただ、それを一人ひとりに毎月やってもらうのが現実的かというと、話は別だと思っています。

この仕事を続けてきて、はっきりしたことがあります。お客様が本当に困っていたのは、分析ができないことではありませんでした。毎月おなじ数字を手で集めて表に貼る作業に時間が溶けてしまい、中身を考える時間が残らないことのほうでした。自動で出るようにしただけで、打ち合わせで話す内容が「集計は合っていますか」から「来月はどうしますか」へ変わっています。足りなかったのは分析力ではなく、考える時間のほうだったのだと思っています。

Under the Hoodも、たぶん同じところで詰まります。設定を開いて、JSONを落として、公開されたコードと突き合わせて、AIに読ませて、意味を確かめる。この手順を毎月踏める運用担当者が、どれだけいるでしょうか。

条件を満たしていても、その画面は出てきませんでした

では自分は確認できるのか。ここが気になる方も多いと思います。公開されている利用条件は2つで、開設から1年以上経っていること、直近1か月に10回以上投稿していることとされています。

読んですぐ、自分のアカウントで設定を開いてみました。項目がありませんでした。最近運用を始めたアカウントだったので、条件を満たしていないのだろうと考え、数年前から使っていてほぼ毎日投稿している別のアカウントでも開いてみました。こちらにも、項目はありませんでした。

試験提供と説明されているので、不具合ではないと思います。つまり公開されている2つの条件は、対象になりうる人の線引きであって、使えることの保証ではないということです。日本語圏でも案内が表示されたという報告は見かけるので、対象は選ばれています。ただ、選ばれたかどうかを本人が知る方法はありません。

書いていて、少し可笑しくなりました。自分が対象かどうか分からないまま待つ。それは、この機能が解消するはずだった状態と、ほとんど同じ形をしています。

なお、公開されたコードにも、まだ入っていない部分があります。どの要素をどれだけ重く見るかという重みや、一部の設定値は非公開のままで、違反を予測する仕組みは悪用を防ぐためとして意図的に外されたと説明されています。第三者が挙動を完全に再現することはできない、ということです。私はWebの開発を長く続けてきて、その中でXやInstagramのAPI(外部のサービスとデータをやり取りするための窓口)も扱ってきましたが、仕様がすべて公開されている前提で作れたことは、ほとんどありませんでした。分かっている側だけで判断を組み立てる。今回も同じだと思っています。

「見えなくなった気がする」と感じたときの順序

運用の現場でいちばん損が出るのは、感覚で過去の投稿を消してしまうことだと考えています。積み上げたエンゲージメントも、そこから来ていた流入も、まとめて失われます。しかも消したことで戻ったのかどうかは、結局のところ確かめられません。

順序を決めておくと、この判断は落ち着きます。まず、本当に届いていないのかを、別のアカウントや第三者に見え方を確認してもらう。次に、画面が出るアカウントであれば、先月ぶんのラベルを見る。そのうえで、心当たりのある投稿だけを対象にする。遠回りに見えますが、消してから悔やむよりは速いと思っています。

もう一つ、告知や集客を1つのアカウントに集めきらないことも効きます。メール配信でも自社サイトでも構いません。可視性が絞られたときに代わりの経路が残っているかどうかで、慌て方がまったく変わります。

まとめ

8月13日にXがやったことは、評価されていいと思っています。存在しないと言い続けてきたものを、コードごと公開したのですから。ただ、確認する手段が用意されたことと、それが手元に届いていることは、まだ別の話です。出てくるのは先月ぶんの集計で、開ける人も限られています。

それでも「見えない」という声が止まらないのは、情報が足りないからではないと考えています。足りないのは、判断できる形と、それを読むための時間のほうです。透明性は、公開された時点ではまだ半分なのだと思います。残りの半分は、受け取る側が読める形に変わったときに、はじめて成立します。

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