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Instagramを開いて、流れてくる投稿を眺めながら「あれ?こんな人フォローしてたっけ?」と感じたことはないでしょうか。私自身、最近よくこの感覚になります。自分がフォローしたはずの人より、見覚えのない誰かの投稿が次々と流れてくる。便利なはずなのに、どこか自分の意思が置いてけぼりになっているような感覚です。
そのInstagramが、フィードを自分で調整できる機能を広げました。「あなたのアルゴリズム」という機能が、ついにメインフィードでも使えるようになったのです。今回はこの機能が具体的に何をするものなのか、そしてSNSを運用する立場の人にとって「届け方」がどう変わるのかを、私なりに整理してみたいと思います。
まず、ニュースの中身を正確に整理します。「あなたのアルゴリズム」は、ユーザー自身が「こういう話題はもっと見たい」「これは減らしたい」と指定できる仕組みです。Instagramがあなたの普段の行動をもとにトピックの一覧を最初に用意し、そこから自分で項目を足したり減らしたりすると、その内容に合わせて表示の傾向が調整されていきます。
ここで誤解しないでおきたいのは、これは「AIのおすすめ表示そのものをやめる」機能ではない、という点です。これまでInstagramのアルゴリズムは、あなたが「タップした・見た・シェアした」という行動から好みを推測していました。今回の機能は、その推測に頼るだけでなく、ユーザーが自分の言葉で「この話題が見たい」と直接伝えられるようになった、という変化です。おすすめの仕組みは残したまま、そこに「自分で指定する入力欄」が一つ増えた、とイメージすると分かりやすいと思います。
この機能は段階的に広がってきました。報道によると、最初にReels(ショート動画)で2025年10月にテストが始まり、2026年4月にはExplore(発見タブ)へ拡張され、そして今回、もっとも多くの人の目に触れる「メインフィード」にまで届いた、という流れです。
背景には、Instagram責任者であるアダム・モッセリ氏の問題意識があります。彼は、アルゴリズムが好みを学習してくれる一方で「ユーザーが自分から好みを伝える手段がなかった」という点を課題として挙げています。冒頭で書いた「あれ?こんな人フォローしてたっけ?」という違和感は、Instagram自身も認識していた、ということなのかもしれません。
ただし、Social Media Todayの記事は冷静な見方も添えています。こうした調整機能が用意されても、多くのユーザーは実際には使わず、これまで通り受け身でフィードを眺め続けるだろう、という指摘です。便利さの前では、わざわざ自分で設定をいじる人は多くない、というわけですね。私もこの見方には現実味を感じます。
ここで一つ、私の考えをお伝えします。ユーザーが使うかどうかは別として、「行動からの推測だけに頼らず、ユーザーに好みを直接尋ねる」という設計の方向性自体は、各プラットフォームに広がっていくのではないかと見ています。
理由はシンプルです。AIによるおすすめ表示は、たしかに滞在時間を伸ばすのが得意です。でもその一方で、ユーザーの「満足度」を犠牲にしてしまいがちなのです。長く見てはいるけれど、見終わったあとに何も残らない。むしろ少し疲れている。そういう副作用に、各社が気づき始めているのだと思います。だからこそ「あなたは何を見たいですか」とユーザーに尋ねる入り口を増やしていく、という発想は理にかなっています。
数字を追う仕事をしていると、「滞在時間」と「満足度」は必ずしも一致しないことを実感します。今回の機能がすぐに広く使われるとは限りませんが、こうした「ユーザーに好みを尋ねる」仕組みは、形を変えながら他のプラットフォームにも増えていくのではないかと感じています。
では、SNSを運用する立場から見ると、この変化はどう影響するのでしょうか。
運用の現場では、フォロワー以外の人にどう届けるか、いわゆる「フォロー外リーチ」が大きなテーマでした。おすすめ経由で知らない人に届くことが、アカウントを伸ばす上で重要だったわけです。そこにユーザーが「自分の見たい話題」を指定できる入り口が加わると、届き方が少しずつ変わってくる可能性があります。
私は、こうした流れの中で有利になるのは「広く浅く」狙うアカウントではなく、「特定の興味に深く刺さる」アカウントだと考えています。あれもこれもと何でも投稿するアカウントより、テーマが明確なアカウントの方が、ユーザーが「この話題が見たい」と選んだときに引っかかりやすくなるからです。そして、その土台になるのが、アカウントの「コンセプト設計」だと思っています。
もし運用担当の方から「何から手をつければいいですか」と聞かれたら、私はまず「コンセプト設計を見直してみてはどうでしょう」とお伝えすると思います。
コンセプト設計とは、難しく言い換える必要はなくて、「誰に、何を届けるアカウントなのか」を一本の筋に通すことです。ここが曖昧だと、せっかくユーザーが「この話題が見たい」と興味を示しても、投稿が引っかかりにくい。プロフィールに書いてあることと、実際に流れてくる投稿の内容がちぐはぐだと、どんな話題のアカウントなのかが伝わらないのです。
私の実感では、強いアカウントは例外なくこの部分が明確です。プロフィールを見れば何のアカウントか一目で分かり、投稿を3つ見れば「ああ、こういう人なんだな」と腑に落ちる。ユーザーが見たいものを自分で選ぶ入り口が増えていく時代には、この一貫性がこれまで以上に効いてくるのではないかと感じています。
「でも、テーマを絞ると届く人が減るのでは?」と思う方もいるかもしれません。私はむしろ逆だと考えています。広く狙って誰の記憶にも残らないより、特定の誰かに「これは自分のための投稿だ」と思ってもらえる方が、結果的に選ばれて広がっていく。そういう局面に少しずつ入りつつあるのだと思います。
最後に、もう少し実務的な話をします。こうした仕様の変更があったとき、現場では「で、うちのアカウントは結局どうなったの?」が気になるはずです。ここは感覚ではなく、数字で捉えるのがよいと思っています。
私が見ておくとよいと感じているのは、フォロワー外リーチの比率と、保存・シェアの数です。「たまたま流れてきて眺められた」投稿より、「保存された=能動的に選ばれた」投稿の方が、ユーザーの意思がはっきり表れます。保存やシェアは、ユーザーが自分の意思で「これは残しておきたい」と動いた証拠だからです。
数字で「どの投稿が選ばれたのか」を追えるようになると、先ほどのコンセプト設計の答え合わせができます。狙ったテーマの投稿がきちんと保存されているか。フォロー外にどれだけ届いているか。私たちがSocialReport(SNSの効果測定・レポートを自動化するサービス)を運営している中でも、こうした「能動的に選ばれた指標」を追うことの大切さは、これからさらに増していくと感じています。
今回のInstagramのアップデートは、フィードを自分でカスタマイズできる入り口が増えた、という変化です。運用する側に求められるのは小手先のテクニックではなく、「誰に何を届けるか」というコンセプトの明確さなのだと思います。変化を恐れるより、自分のアカウントの軸を見つめ直すきっかけにできるとよいですね。