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Instagramの責任者が、投稿を届けたい作り手に向けて「総再生数やいいね数より、エンゲージメント率を見てほしい」と語りました。理由を一言でいえば、再生数やリーチは「どれだけ配られたか」という結果にすぎず、次にどれだけ配られるかを決めているのは「見た人がどう反応したか」のほうだからです。
SNSの効果測定とレポート作成を自動化するサービス、SocialReportを運営している私は、この発言を読んでレポートの作り方を見直すきっかけになると感じました。このコラムでは、発言の意味を整理したうえで、代理店や運用担当の方が月次レポートをどう組み直すとよいかを、私の考えとしてお伝えします。
Instagramの責任者であるアダム・モセリ氏は、2026年9月に自身のInstagramアカウントで、投稿の並べ方(ランキング)を説明する動画シリーズを公開しました。なぜ並べ替えるのか、どう決めているのか、利用者は何を調整できるのか、作り手は何ができるのか、という内容で、これまでに4回公開されています。米国のSNS専門メディアSocial Media Todayが、9月24日にその内容をまとめています。
モセリ氏によれば、Instagramが投稿を並べ替えるのは、並べ替えないとたくさん投稿するアカウントの投稿でフィードが埋まり、作り手の平均リーチもかえって下がるからです。並べ方は、利用者がその投稿にどう反応しそうか、つまり最後まで見そうか、友だちに送りそうか、といった予測にもとづいて決まります。
そのうえで、反応のほかにも重視している点として4つを挙げました。再投稿よりも元の作り手を優先する「オリジナリティ」、新しい投稿ほど表示されやすい「新しさ」、小規模な作り手の投稿をまずフォロワー以外に見せて反応を確かめる「テスト表示」、そして、より多くの要素から学ぶよう拡大したAIモデルです。作り手向けの回では、リーチを伸ばしたいなら総再生数やいいね数ではなくエンゲージメント率を見ること、トライアルリール(フォロワーには表示せず、フォロワー以外にだけ試験的に見せるリール)で内容を試すこと、燃え尽きない範囲でたくさん投稿することを勧めています。
この助言は、今回が初めてではありません。モセリ氏は2026年5月にも、大事なのは投稿がどれだけ届いたかではなく、なぜ届いた量が増えたり減ったりしたのかを知りたいならエンゲージメント率を見てほしい、という趣旨のことを語っています。
つまり、総再生数やリーチは「配られた結果」です。その結果を左右しているのは、投稿を見た人のうち、どれだけが反応したかです。見た人がよく反応する投稿ほど「興味を持たれている」と判断され、さらに多くの人へ配られます。再生数だけを見ていると、伸びた投稿と伸びなかった投稿の違いはわかっても、なぜ違ったのかはわかりません。率を見ると、その理由に近づけます。
反応の種類によって意味が違う点も、モセリ氏の説明から読み取れます。いいねは主にフォロワーの画面で上に表示されるための手がかりになり、友だちへの送信(DMでのシェア)は、フォロワー以外へ広げるかどうかの手がかりとして重く見られていると説明されています。同じ「反応」でも、フォロワーに届けたいのか、新しい人に届けたいのかで、見るべき数字が変わるということです。
SocialReportを運営していて見えている範囲では、レポートの冒頭に置かれる指標はフォロワー数の増減が圧倒的に多く、率を先頭に置いている方はほとんど見かけません。クライアントにとって一番わかりやすい数字だからだと思います。フォロワーが増えていれば、説明しなくても成果に見えるのです。
ただ、フォロワー数も再生数も、モセリ氏の言葉を借りれば「結果」の側の数字です。結果だけが並んだレポートでは、先月より伸びた理由も、落ちた理由も説明できません。フォロワーが少ないのに1本だけ急に伸びた、という相談を受けることもありますが、これもフォロワー数を見ているだけでは理由がわからない典型だと思います。フォロワー以外にまず見せて反応を確かめる、という今回の説明に照らせば、その1本は見た人の反応がよかったから配られた、と読むのが自然です。
もちろん、フォロワー数に意味がないわけではありません。ブランドの規模を伝える数字として、クライアントが見慣れた数字として、役割はあります。足りないのは、その隣に「なぜそうなったか」を示す数字が置かれていないことです。
代理店や運用担当の方から「アルゴリズムについてこう聞いたのですが、本当ですか」という質問を受けることはよくあります。「投稿は○時がいい」「ハッシュタグは○個まで」といった話です。私は、公式が言っていることと第三者の推測を分けたうえで、「公式は言っていないので、自社の数字で確かめましょう」とお答えしています。
今回の発言についても、海外の解説記事では「オリジナル投稿は何割多く配信される」といった具体的な数字が出回っています。ただ、モセリ氏本人の動画や、それをまとめた記事では、そうした数字は確認できませんでした。モセリ氏が勧めているのは、誰かが出した数字を当てはめることではなく、自分の投稿の率を見て、何が反応されたのかを確かめることです。噂の数字に頼らず自社の数字で確かめる、という考え方とも重なります。
今回の発言を受けてレポートを1か所だけ変えるとしたら、私はフォロワー数の増減の隣に、エンゲージメント率を並べて置くことをお勧めします。結果の数字の隣に、理由を示す数字を置くということです。そのとき、率の横には「何で割ったか」も書き添えておきます。エンゲージメント率は、フォロワー数で割るか、投稿を見た人の数で割るかで値が大きく変わるので、分母が書かれていないと、翌月とも他社のレポートとも比べられないからです。
トライアルリールのような試験投稿は、通常投稿と別枠にするのがよいと考えています。試験投稿はフォロワー以外にだけ届くので、届く相手がそもそも違います。通常投稿と混ぜて平均を取ると、率の比較が崩れてしまいます。
投稿本数の約束についても触れておきます。運用代行では「月○本」と本数を契約で決めていることがありますが、私は本数を約束するより、率で成果を見て、本数は運用する側の裁量に任せるほうが結果につながりやすいと考えています。本数を守るために中身が薄くなれば、見た人の反応が落ち、結果として次の投稿が届きにくくなるからです。
Instagramの責任者が「再生数より率を見て」と語ったのは、再生数やリーチが配られた結果にすぎず、次にどれだけ配られるかは見た人の反応で決まるからです。反応の中でも、いいねはフォロワーへ、送信はフォロワー以外へ届けるための手がかりとして使われていると説明されています。
レポートの1ページ目が結果の数字だけで終わっていると、伸びた理由も落ちた理由も説明できません。フォロワー数の隣に率を置き、試験投稿は別枠で見る。それだけで、レポートは「何が起きたか」から「なぜ起きたか」を語れるものに変わると思います。