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SNSマーケティング

Metaの「Edits」が分析機能を取り込んだ——純正アナリティクスは外部ツールを不要にするのか

AI博士

約7分で読める記事です。ポイントをギュッとまとめましたので、ぜひ最後までどうぞ!

MetaがReels制作アプリ「Edits」に、分析機能を大きく追加しました。フォロワーの活発な時間帯がわかるオーディエンスインサイト、Reelsを最大3本まで並べて比べる比較機能、そして分析データをPDFで書き出してブランドやパートナーと共有する機能。制作から分析、共有まで、ひとつのアプリで完結させようとしています。SNSの分析ツールを運営している立場から言うと、この流れ自体はむしろ歓迎しています。ただ、純正ツールがどれだけ強くなっても埋まらない死角がある、とも考えています。今回はその話をします。

そもそも「Edits」とは何か

本題に入る前に、Editsを知らない方のために簡単に説明します。Editsは、Metaが2025年に出した、Reels(InstagramやFacebookの短い縦型動画)を作るための無料の動画編集アプリです。スマホひとつで、撮影からテロップ入れ、音源やエフェクトの追加、投稿までを完結できます。

立ち位置としては、TikTokを運営するByteDanceの「CapCut」への対抗だと見るとわかりやすいと思います。CapCutは世界中のクリエイターが動画編集に使っているアプリで、Reels作りにも広く使われています。Metaとしては「自社向けの動画は、自社のアプリで作ってほしい」という狙いがある。そんな制作アプリが、今回ついに分析や共有の領域にまで踏み込んできた、というのが今回のニュースです。

Metaは「作る」と「測る」を1つのアプリに寄せ始めた

まず、何が追加されたのかを整理します。Editsはもともと、Instagramの短尺動画「Reels」を編集するためのアプリです。そこに今回、オーディエンスインサイト(フォロワーがいつ最もアクティブかを示す指標)、Reels最大3本の並列比較、分析のPDFエクスポートが加わりました。あわせて、テキストで指示して映像の要素を変えられるAIリスタイル機能も拡張されています。

注目したいのは、分析をPDFで書き出して「ブランドやパートナーと共有」できるようにした点です。制作アプリが、作るだけでなく「分析レポートを取引先に渡す」ところまで踏み込んできた。これは単なる機能追加というより、プラットフォームが制作から測定までを抱え込もうとする動きだと受け止めています。

純正ツールが強くなるのは、むしろ追い風だと思う

こういう更新を見ると、「外部の分析ツールは要らなくなるのでは」と考える方もいるかもしれません。私の見方はその逆です。

分析を手軽に行えるようにしてくれること自体は、純粋にありがたい。プラットフォームが「数字を見て運用しよう」という文化を広めてくれるほど、データに基づいて動く人が増えます。そうなると、もっと踏み込んだ分析をしたいという需要も同時に育っていく。入り口が広がれば、その先も広がる、という感覚です。

ただし、ここで現場の人がすぐ直面する壁があります。数字は見られるようになった。でも、そこから報告用のレポートを作るのは、かなりの手間です。しかも毎月、継続的にとなると、その負荷は相当なものになります。見ることと、まとめて誰かに渡すことのあいだには、思った以上に深い溝がある。この溝こそが、外部ツールの存在意義が残る場所だと考えています。

純正アナリティクスが、構造的に届かない領域

純正ツールには、設計思想からして踏み込めない領域があります。経験上、はっきりしているのは次のようなものです。

ひとつは、複数プラットフォームの横断です。X、Instagram、TikTokをまたいで全体を一枚で見たい——これは純正ではまず無理だと思っています。各社が見せてくれるのは、あくまで自分たちのプラットフォームの数字だけだからです。

もうひとつは、競合との比較です。Metaが自社のツールで「TikTokと比べてどうか」「競合アカウントと比べてどうか」を見せる動機はありません。純正で見られるのは、基本的に自社アカウントの数字に閉じています。自分の庭の中はよく見えるけれど、隣の庭や街全体は見えない。これは便利さとは別の、構造的な死角です。

さらに見落とされがちなのが、オーガニックデータの収集です。自社アカウントの成績ではなく、世の中でそのテーマがどれくらい話題になっているかを知りたい場面があります。たとえば特定のハッシュタグで検索して、関連する投稿がどれくらいの規模で広がっているか、どんな傾向があるかを調べたいとき。こうした「自社の外側にある、世の中の生のデータ」は、純正ツールの守備範囲の外にあります。

いちばん注目したのは「PDF出力」だった

今回の更新で私が一番引っかかったのは、AIリスタイルでも比較機能でもなく、分析をPDFで書き出せるようにした点でした。これは、代理店がクライアントに毎月出している運用レポートと、領域がかぶってくるからです。

気になったので、実際に自分のInstagramアカウントで30日分のPDFを出力してみました。結論から言うと、日本語にはきちんと対応していました。ここは安心材料です。ただ、中身はかなりあっさりしていました。リール動画の閲覧数、リーチしたアカウント数、いいね、コメント、再投稿、シェア、保存、リール本数といった累計の数値が並び、その下に投稿のサムネイルが一覧で表示される。出てくるのは、これだけです。時系列でどう推移したかのグラフも、投稿ごとの詳細な比較表も、ましてや競合や他媒体との横断データもありません。言ってしまえば、直近30日の累計スナップショットが一枚出てくる、という内容でした。

日々の調子をパッと確認するには、これで十分かもしれません。でも、クライアントや上司に毎月提出する報告書として使えるかというと、正直まだ物足りないというのが実感です。だからこそ、これでレポートツールが不要になるとは考えていません。理由はシンプルで、すべてのデータを同じフォーマットで見られない限り、企業はレポートを統一したいはずだからです。プラットフォームごとにバラバラの体裁のPDFが何枚も出てきても、受け取る側は結局それを並べ直す手間を負います。本当に欲しいのは、複数の媒体を同じ物差し・同じ体裁でまとめた一枚です。だからこそ、横断してフォーマットを揃える需要は続くと見ています。

レポートを「出すこと」自体は、これからどんどん自動化され、安くなっていく。そうなったとき、価値の重心は「出すこと」から「読み解いて、次の一手につなげること」へ移っていきます。数字を並べるだけでなく、そこから何が言えるかを語れるかどうか。そこが分かれ目になっていくと感じています。

純正と外部は、対立ではなく役割分担

ここまで死角の話をしてきましたが、純正を脅威として捉えてほしいわけではありません。実務では、対立ではなく役割分担で考えるのが現実的です。

日々の手触り——いつ伸びたか、どのReelsがよかったか——は、純正でその場でサッと見るのが一番早い。気軽に見て、気軽に共有できるようになったのは、素直に歓迎すべきことです。一方で、そこからデータの幅を広げて、クライアントや上司に報告・共有する段になると、まとまった報告用のレポートが必要になります。複数プラットフォームの横断、競合との比較、世の中のオーガニックなデータ。このあたりが必要になったら、外部の道具の出番です。

この線引きを自分の中に持っておくと、新しいツールが出るたびに振り回されずに済みます。「これは純正で十分」「ここからは外部」と切り分けられるからです。

まとめ

プラットフォームが制作も分析も抱え込む流れは、これからも進んでいくはずです。気軽にデータを見られて、共有できるようになるのは歓迎すべき変化です。そのうえで、データの幅を広げてクライアントや上司に報告する段階になれば、横断して一枚にまとめる報告用のレポートが必要になる。手軽さの先にある、この「もう一段」を見据えておけるかどうかが、運用の質を静かに分けていくのだと思っています。

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