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日本のXクリエイター界隈で、Substackへの移行が急加速しています。イケハヤ氏が登録を開始してから短期間で5,000人超の購読者を獲得したというニュースは、SNS運用の現場でも話題になりました。この動きを一見「インフルエンサーブーム」にも見えますが、私には、SNS運用の本質的な問題意識が重なって見えています。
Substackはメールベースのニュースレタープラットフォームで、グローバルでは月間アクティブ購読者数が3,500万人規模(2026年時点)に達しています。日本ではまだアーリーアダプター期と言える段階ですが、Xのクリエイターが次々に移行している背景には明確な理由があります。「フォロワー数ではなくメールアドレスを資産として持てる」という点です。
ただし、Substackはそもそも拡散力がXと比べると限定的で、Xでの認知を前提とした設計だという点は見落とせません。
私がSNS効果測定サービス「SocialReport」を開発・リリースする過程で一番強く感じてきたのは、「フォロワー数は見えるけど、誰がフォローしているかをこちらで管理できる手段がほとんどない」という非対称性です。Xのアカウントに何万人のフォロワーがいても、アカウントが消えた瞬間に連絡手段がゼロになる。この構造上の問題は、ツール側を開発していてより鮮明に見えてきます。
きっかけは、Xがある日突然APIの仕様を変えて、取得できるデータが大幅に減ったことでした。「ツールとして積み上げてきたものが、プラットフォームの一存で崩れる」という感覚を、あのときリアルに経験しました。ユーザー側も同じ状況に置かれているわけです。
さらに、SocialReportでXのAPIデータを扱っていると、同じアカウント・同じ時間帯でもインプレッション数が週によって2〜3倍ブレることはよくあります。「今週なんでこんなに伸びているんですか?」と聞かれても、API側を見ても明確な原因が特定できないことが多い。Xは推奨アルゴリズムのコア実装を GitHub(xai-org/x-algorithm)で公開しており、2026年5月にもエンドツーエンド推論パイプラインが追加されています。ただし公開されているのは縮小版のモデルと実装コードのみで、本番で実際に効いている重み・チューニングパラメータ・個々の変更の意図は非公開のままです。だから「コードは読めるが、なぜ今週これが伸びたかは追えない」状態が続いています。最近では、会話の深さ(返信連鎖)やバズ投稿への引用ポストが拡散に有利に働く傾向があると言われていますが、それも常に変化し続けています。
SNS運用代行の現場で感じているのは、アカウント凍結の原因を知らない方が多いということです。フォローやいいねを集中的に行う操作は、手動であっても凍結リスクを高める行動として知られています。自動化ツールを使ったフォロー・いいねはさらに明確にNGで、2023年以降の制限強化に伴い、取り締まりも強化されていると見られています。
問題は、そのリスクを「知らないままやっていた」方が相談に来るケースが多いことです。凍結されてそのまま復旧できない場合、それまで投資してきたものがすべて消えてしまいます。代理店やツール提供者が先回りして伝えなければならない情報だと思っています。
クライアントにプラットフォーム依存リスクを伝えるとき、私は「借地に家を建てている状態」というたとえを使うことがあります。フォロワーはXが保有しているもので、あなたが100%管理できる資産ではない、と。地主(X)の都合でいつでも退去させられる可能性がある、という話をすると「じゃあどうすればいいですか?」という流れになるので、そこでメールリストやLINE公式といった「自社が管理できる接点」の話につなげます。
ただ、この話を受け入れてもらいやすいかどうかは、過去にアカウント凍結やアルゴリズム変更で実際に痛い目を見た経験があるかどうかで大きく変わる印象です。経験のない方に「万が一のリスク」を伝えるのは難しく、具体的な事例を使って現実感を持ってもらう必要があります。
KPIの設計でも同じことが言えます。フォロワー数の推移だけをKPIにされているケースは多いですが、「増えた理由」が説明しにくいことがほとんどです。私はエンゲージメント率やリンククリック数など「次のアクションにつながったか」を重視した指標を提案するようにしています。フォロワー数は分かりやすい指標ではありますが、プラットフォームの変動に左右されやすく、コンテンツの本当の効果を測りにくいからです。
Substackのようなプラットフォームをクライアントに提案する際は、「向いているクライアント像」と「向いていないクライアント像」を整理することが先になると感じています。すでにXやnoteで一定のファン層を獲得していて、定期的にコンテンツを出せる方であれば、Substackは深い読者関係を築く場として機能します。一方、まだSNS運用自体が軌道に乗っていない段階では、拡散力の低いSubstackから始めても購読者は集まりにくい。「まずXで認知を積んでから」という順序が、現実的な落とし所だと思います。
XクリエイターのSubstack移行は、「プラットフォームに依存しない読者資産を持ちたい」という本質的な欲求の表れだと思っています。SNS運用に関わる立場からすると、この問いは今に始まったことではなく、SocialReportを作りながら何度も向き合ってきた問題です。フォロワー数という見えやすい数字に集中しすぎず、誰とどこでつながっているかを意識することが、長く続く運用の基盤になるのではないでしょうか。