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X (Twitter)

データが高すぎて研究が止まる——XのAPI有料化を、データで価値を作る立場から考える

AI博士

約6分で読める記事です。ポイントをギュッとまとめましたので、ぜひ最後までどうぞ!

SNS上で何が起きているのかを調べる研究があります。たとえば、フェイクニュースがどう広がるのか、世論がどう動かされていくのか。こうした研究には、大量の投稿データが欠かせません。ところが今、そのデータを取り出す仕組みが有料化され、研究者には手が出ないほど高くなっています。報道によれば、200万件を超える分析に最低800万円規模の費用がかかるとも言われます。

私はSNSのデータを扱う仕事を続けてきました。今回のニュースは研究者の話として報じられていますが、実は分析や運用代行の現場も、まったく同じ「データが高くなる」流れの中にいます。今回はこの問題を、データで価値を作る側の立場から整理してみたいと思います。

何が起きているのか——「データを取る窓口」が有料になった

まず、用語を一つだけ補足します。API(エーピーアイ)とは、外部のプログラムがサービスからデータを受け取るための窓口のことです。研究者や分析ツールは、このAPIを通じてX(旧Twitter)の投稿データを取得してきました。

かつてXには「学術研究向け」の専用枠があり、研究者は大量のデータを無料に近い形で取得できました。ところが報道によると、この専用枠は2023年に新規受付を停止し、2026年2月には決まった料金プランも撤廃されて、使った分だけ払う従量課金へと切り替わりました。結果として、大規模なデータ収集には多額の費用がかかるようになっています。

東京科学大学の笹原和俊教授は、偽情報や情報工作の研究に必要なデータが取りにくくなったと指摘しています。代わりにAIで仮想の人格を大量に作って拡散を再現する手法も試みていますが、ご本人も「本物のSNSとは違う、苦肉の策」と認めているそうです。研究の現場が、データの値段によって立ち行かなくなりつつある、ということですね。

正直、私は「しょうがない」と感じています

ここで一つ、私の考えをお伝えします。今回の有料化について、私は「ついにここまで来たか」と憤るより、「しょうがないかな」と感じている部分が大きいのです。

理由は、データを提供する側の事情も理解できるからです。サーバーを動かし続けるには費用がかかります。それを広告収入だけで賄うのは、年々厳しくなっています。さらに今は、さまざまなAI企業が学習用のデータを強く求めている時代です。そうした中で、価値のあるデータをいつまでも無料で開放し続けるのは、経営的に難しい。データに値段がつくこと自体は、ある意味で健全な揺り戻しだとも言えると思っています。

ただ、一つだけ引っかかるのは、その価格設計と取得できる上限の設定が、現場の実態と乖離しすぎていたことです。理解はできるけれど、いきなり跳ね上がりすぎて、現場としてはかなり厳しくなった。私の本音はこのあたりにあります。

背景にある、もう一つの大きな流れ

ここで、ニュースの背景にある事実を補足しておきます。これは私の意見ではなく、報道で語られている流れです。

報道によれば、Xは2022年にイーロン・マスク氏が約440億ドルで買収した際、多額の負債を抱える形になり、その後は広告収入が大きく落ち込んだとされています。広告だけでは収益が厳しい、という状況が背景にあるわけです。

さらに見逃せないのが、2025年にマスク氏のAI企業であるxAIがXを買収した、という動きです。報道では、Xのリアルタイムな投稿データを、AI「Grok」の学習に独占的に使える点が大きな狙いだと指摘されています。つまり、X上のデータはもはや単なる「閲覧されるSNSの中身」ではなく、AI開発のための中核資産になった、ということです。データの有料化と、この一連の動きは地続きだと見ると、今回の値上げの意味がより立体的に見えてきます。

では、現場はどう向き合えばいいのか

研究者ほどではないにせよ、SNSの運用代行や分析ツールの現場でも、同じ「データが高い・取りにくい」影響は確実に表れています。無料や低価格でデータを取れる前提だったツールが、次々とサービスを終了したり、機能を縮小したりしています。私たちも、データの取得方法の設計を何度も見直してきました。「取れて当たり前」が、もう通用しなくなっているのです。

では、どうするか。私が現実的だと思っているのは、「全件取得にこだわらない」という発想です。目的によっては、すべてのデータを集めなくても、一部を抜き出して分析するサンプリングで十分な精度が出ることがあります。また、各プラットフォームが公式に出している集計値やインサイト(傾向をまとめた数値)を組み合わせれば、生のデータを大量に買わなくても判断できる場面は意外と多いのです。

「サンプリングだと精度が落ちるのでは?」と思う方もいるかもしれません。もちろん、すべての分析に当てはまるわけではありません。けれど、知りたいことが「全体の傾向」であれば、全件をなめるように集める必要はない、というのが私の実感です。コストと目的のバランスを取る視点が、これまで以上に大事になってきています。

大事なのは「取る量」ではなく「意味を引き出す力」

最後に、データで価値を作る事業者として、私が大事にしていることをお伝えします。

それは、「データを多く取ること」より「取ったデータから意味を引き出すこと」です。安く大量に取れた時代が終わるのなら、勝負どころは取得量ではなく、解釈の質に移っていきます。同じデータからどれだけ意味のある気づきを引き出せるか。私たちがSocialReport(SNSの効果測定・レポートを自動化するサービス)でレポートに価値を作っているのは、まさにこの考え方が理由です。

データが高くなる時代は、一見すると逆風に見えます。けれど、量で勝負できなくなるからこそ、「どう読むか」で差がつく時代になる、とも言えると思っています。

まとめ

XのAPI有料化は、研究者だけの問題ではなく、SNSのデータに関わるすべての人に及ぶ変化です。データが資源として値付けされる時代に、私たちに問われているのは「いかに多く集めるか」ではなく「集めたものからいかに意味を引き出すか」なのだと感じています。

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